こんにちは。 Dr. Noriです。
褥瘡ができたときに、いろいろな被覆材(ドレッシング剤)や薬剤(外用薬)を使用されていると思います。
処置の仕方もさまざまで被覆材も多種あり、その中から選択しなければなりません。
迷うことはありませんか?
先輩のやり方を見様見真似で覚えたり、経験に頼った手法を選択することも決して稀ではないと思います。
あらためてどのような場合に何を選択するか?と問われるとどうでしょうか?
ガイドブックなどを見れば網羅的に多種多様な被覆材が記載されていますが、今回は被覆材の選択についてなるべくシンプルになるように整理してみたいと思います。
はじめにチェックすべき項目
褥瘡の状態評価にはDESIGN-R分類やNPUAP分類が一般的に使用されます。
各分類の詳細はいろいろなところで紹介されていると思いますので割愛します。
これら分類で評価することで注目する項目を網羅していますが、被覆材を選択する上でどう活かすかという視点でみると、大切なのは以下の項目になります。
- 感染の有無
- 壊死組織の有無
- ポケットの有無
- 肉芽形成の有無
- 滲出液の量
では各項目ごとに見ていきましょう。
感染の有無
まずはじめに感染の有無を判断しましょう。
感染がある場合、滲出も多いことが多いので、抗菌性と吸収性のある薬剤の選択が良いと思います。
細かな壊死組織の除去も考慮し、カデックス軟膏Ⓡなどを塗布し、メロリンⓇで浸出液を吸収します。
仙骨部などで、便や尿で汚染されやすい場合はさらにフィルム等で覆います。
壊死組織の有無
壊死組織には黒っぽくなって乾燥しているものと、黄緑色の湿潤したものがあります。
壊死組織は除去(デブリ)するのが基本なのですが、乾燥したものの場合はすぐに除去ができません。
乾燥した壊死組織がある場合
乾燥した壊死組織には、まずフィルムなどで覆って乾燥した部分を湿潤させるようにします。
ここで吸湿性の高い被覆材を使用すると乾燥した部分は湿潤しないので、デブリができる状態になかなかならないことがあるので注意が必要です。
浸出液が多めの場合はメロリンⓇなどがよいでしょう。
切除可能な程度に柔らかくなったらデブリを行い壊死組織を除去します。
湿潤した壊死組織がある場合
黄緑色の湿潤した壊死組織はデブリも容易なので、直ちに壊死組織を切除します。
浸出液が認められることが通常なので、滲出液の量に合わせた吸湿性の高い被覆材を選択して良いと思います。
ただし、壊死組織を切除した結果ポケットがあるようであれば次項を参考にしてください。
ポケットがある場合
褥瘡処置において洗浄はとても大切です。
ところが、ポケットの大きさや形状によってはポケット内の洗浄が容易ではありません。
特に、ポケット内に外用薬を注入して処置をしている場合、ポケット内の薬剤を洗い流すことが難しいことがあります。
そのような場合は、薬剤の注入ではなくアルギン酸の吸水力と銀イオンによる抗菌作用をもったアルジサイト銀Ⓡやアルゴダーム・トリオトニックⓇなどを使うとよいでしょう。
ポケット内にこれらの製品を軽く充填し、メロリンⓇなどで被覆します。
浸出液が滲み広がったら交換します。
洗浄が容易な場合は、カデックス軟膏Ⓡなどを塗布し、メロリンⓇで被覆する処置でよいでしょう。
肉芽の有無と滲出液の量
治癒過程において肉芽が形成され盛り上がってくる過程で、浸出液の量も変化してきます。
浸出液が多い場合、ハイドロサイド・ライフⓇのような吸収力が高い被覆材が選択されます。
感染を心配するようであれば、ハイドロサイト・ジェントル銀Ⓡのような被覆材が選択されます。
ただし、浸出液が多い場合、より吸収力を優先するのであればハイドロサイド・ライフⓇのようなタイプの方が良いでしょう。
表皮が形成されてきて浸出液が少ない場合は、ハイドロサイト薄型ⓇやレプリケアETⓇなどが選択されます。
被覆材が便や尿で汚染されにくくするために
せっかく洗浄し処置後に被覆材で覆っても、便や尿で汚染され剥がれてしまう懸念があります。
被覆材を保護するために被覆材の上にさらにフィルムを貼る方法もありますが、個人的にはハイドロサイトのような被覆材の上にフィルムを貼ってもあまり有効ではないと考えています。
ハイドロサイトの上に貼るフィルムにシワがなく貼れていればいいのですが、シワがあるとその隙間に尿が溜まるなどしてしまうこともあるでしょう。
そこで、ハイドロサイトの上にワセリンや撥水性のジェルなどを塗布する方法が安価で手間がかからないと考えています。
ハイドロサイトのような被覆材の表面(外側)は滑りがよくなるように工夫されていますが、皮膚の剥離刺激をより軽減させるために被覆材表面にワセリンなどを塗布するのは有効ではないかと考えています。
皆さんはどのような工夫をされていますか?
費用、保険適応の話
最後に被覆材の費用について簡単に触れたいと思います。
被覆材はすべてが保険適応になっているわけではないのです。
ここが面倒な部分です。
まず、Ⅲ度以上のものであれば保険適応となります。この場合処方が可能となります。
処方時にパッドの大きさを記載することが大切です。
おおよそ2週間分までは処方可能です。
それ以上の期間使用する場合は、被覆する創傷の状態、経過、転機、箇所などの被覆材が必要となる理由を具体的に詳記に記載しないと査定されてしまうようです。
Ⅲ度に満たない場合、保険適応ではなくなるため処方ができません。
Ⅱ度の場合、処置で材料として算定できる場合がありますが、2週間までとなっています。
それ以上の期間使用した場合、医療機関からの持ち出しになります。
処置として算定する場合にも条件があります。
日々のケアを訪問看護さんが行う場合、医師からの指示を必要とします。
また、訪問看護さんは医療機関にいつどのように使用したか報告しなければなりません。
これは使用状況をレセプトに記入しなければならないからです。
以上をザックリとまとめると、
- DESIGN-R分類D3以上は保険適応なので処方できる。長期使用する場合は詳記が必要。
- Ⅱ度は条件を満たせば処置で算定できる。
ただし、医師の指示のもと行うこと、使用状況を報告すること、2週間分まで。
となります。
制度上いろいろと条件があるので、被覆材をどう選択し使用するか、なかなか難しいのです。
被覆材を使用する場合は、主治医に確認をしてから使用するとよいでしょう。