処置・手技

病院での点滴と自宅での点滴の違いー在宅で末梢点滴をする場合の注意点

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こんにちは。 Dr. Noriです。

在宅医療の現場で点滴が必要なることが少なくありません。

そこで今回は自宅で末梢点滴を行う前に確認しなければならない注意点について解説していきます。

在宅で点滴をするのはいろいろ制限があります

「点滴」は医療行為なので医療機関で行うのが通常ですが、自宅療養される場合に医師の指示のもとに自宅で点滴を行うことができます。
ここでは末梢点滴について解説しています。

同じ「点滴をする」という行為でも病院で行うのと自宅で行うのは同じではありません。

どのような違いがあるでしょうか?

在宅で抹消点滴をする場合の注意点
  • 点滴のつなぎ替え
  • ヘパリンロック
  • 点滴内への薬剤混注は困難なことが多い
  • 静脈内投与(iv)は困難なことが多い
  • 頻回の抗生剤の投与は困難

病院ではいろいろできます

病院では昼夜に関わらず看護師さんがいるのでいろいろなことができます。

ポイントとなる点をあげてみましょう。

  • 点滴が途中でなくなりそうになった場合に、次の点滴につなぎ替えることが出来る
  • 点滴を途中で中止することができる(ヘパリンロック)
  • 点滴内に薬剤を追加(混注)することができる
  • 薬剤を静脈注射(静注(iv))できる
  • 抗生剤など一日に何回かに分けて投与する点滴を実施できる

病院では当たり前すぎるので、普段意識していないことばかりではないでしょうか?

点滴のつなぎ替えはいつでもできますし、点滴を日中だけで夜は中止(ヘパリンロック)してゆっくり眠れるようにするとか、点滴ボトルの中に例えばH2ブロッカーを追加できる、利尿剤をivできる、一日3回や4回に分割して投与しなければならない抗生剤を投与できるなど普通に行われているのです。

自宅では点滴を行う時に検討すべきこと

一方、自宅では看護師さんは常にいないため病院とは同じようにはできません。
そこで以下のような課題について検討しなければなりません。

  • 点滴をつなぎ替えを誰がいつ行うか?
  • ヘパリンロックはいつ誰が行うか?
  • 点滴内に薬剤を混注することができるか?
  • 静注は誰がいつ行うか?
  • 頻回の抗生剤の準備(薬液溶解と点滴ラインのセットと接続)と投与を誰が行うか?

もう少し詳細に解説しましょう

点滴のつなぎ替えはどうするか?

点滴のつなぎ替えは家族でも可能ですが、点滴の交換の時間が例えば深夜や早朝になったりすると家族にとってかなりの負担となります。ゆっくり休むことができません。

日中に交換する場合でも交換のタイミングにその場にいなければならないのも家族にとって負担になります。買い物や用事で外出するのも気になってしまいストレスになってしまうこともあります。

そこで、患者さんの状態を考慮しつつ交換頻度がなるべく少なくなるように、交換時間を考慮して点滴の量や速度を決めなければなりません。

点滴内への薬剤混注や静脈内注射はどうするか?

点滴内に薬剤を注入する行為は医師または医師の指示のもとに看護師や薬剤師でないとできません。同様に静脈内注射(iv)も医師または医師の指示のもと看護師が行います。

したがって、自宅で薬剤混注や静脈内注射を実施する場合、その都度看護師が訪問しなければなりません。

現実的には、時間を決めて毎日のように看護師が訪問することは容易ではなく、また訪問頻度が増えると費用負担が増えることも考慮しなければなりません。介護保険が適応されている場合は、点数が不足してしまうと自費分が発生してしまうこともあります。

これらの理由により自宅での薬剤混注や静脈内注射の実施は難しいことが多いのが実情です。

頻回の抗生剤投与は難しい

同様に一日に何回かに分けて投与しなければならない抗生剤の投与を行うことは難しくなります。

その都度抗生剤を溶解して点滴ラインをセットして接続しなければなりません。もちろんこれらも家族が行うことはできません。薬剤によっては一日3−4回に分ける必要があるため、薬剤混注や静脈内注射の場合と同様に、頻回の訪問が困難であったり費用面の問題が生じます。

そのため頻回の抗生剤投与が必要な状態(感染症)の場合は入院で治療を行う方が良いでしょう。

 

このブログでは在宅医療に関わる看護師や薬剤師、介護する家族だけでなく病院で退院調に関わる方にも役立つ情報を紹介することを目的としています。
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