こんにちは。 Dr. Noriです。
かなり久しぶりの更新となりました。
その間、世界中でワクチン接種が始まり、日本でもだいぶ接種が進んできました。
一方、変異型の出現など新型コロナウイルスの感染はまだまだ予断を許さない状況かと思います。
それはさておき、今回は知っておきたい尿道カテーテルのトラブルシューティングを解説したいと思います。
日頃何気なく行っている対処法が正しいのか疑問を持っていてもなかなか聞けないこともあるかと思います。
私の記憶から比較的よくあった尿道カテーテルトラブルをピックアップしてみました。
看護師さんだけでなく医師の方にも参考になると嬉しいです。
カテーテルの脇から尿がもれる
カテーテルが挿入されているにも関わらず、カテーテルの脇から尿がもれて、下着やおむつが濡れる、という状況を目にすることは決して珍しくありません。
さて、皆さんはどう対処されていたでしょうか??
よく耳にした対処法に、「尿道カテーテルの固定水を増やす」というものです。
「あるある」でしょうか??
ではカテーテルの脇から尿が漏れる問題について解説していきます。
カテーテル内を流れなくなった場合ー閉塞
もし何らかの理由でカテーテル内を尿が流れなかったとしたらどうなるでしょうか?
尿が流れないと膀胱内に尿がたまるため、強い尿意を感じるようになります。
強い尿意とともに息んだり膀胱が収縮してカテーテルの周りから漏れ出てしまいます。
では、どのようなときににカテーテルの中を尿が流れなくなるのか考えてみましょう。
まず、カテーテル内部が詰まっている(閉塞)場合です。
出血した場合に血塊が詰まることもあるでしょう。
出血がない場合でも、尿中の浮遊物や砂状の沈殿物がカテーテル内に詰まる場合もあります。
カテーテル先端の穴を析出物が結石のように塞いでいることも珍しくありません。
このような場合は、洗浄して閉塞を取り除く方法と新しいカテーテルに交換する方法で解決します。
カテーテル内を流れなくなった場合ー屈曲
閉塞意外にもう一つカテーテルの中を尿が流れなくなるのがルートが屈曲している場合です。
カテーテルは、固定水を注入する部分と集尿バッグに接続する部分が必要なため、それら構造部分が太く重くなります。
そのためカテーテル本体と接続部分のところで屈曲しやすくなっています。また下着から出て方向転換するため屈曲しやすくなります。
集尿バッグ自体もその構造から屈曲しやすいものがあります。
屈曲予防のための補強材が巻かれていることがありますが、ズレてしまったり補強材のない部分が折れたりすることがあります。
補強材がずれないようにテープで固定したり、補強材を追加するなど工夫をするとよいでしょう。
腎瘻やPTCDなど細いカテーテルを使用している場合は、舌圧子を切って添え木のようにしてしっかりとしたテープで固定する方法を使うこともあります。
カテーテルの閉塞や屈曲がない場合ー息み
カテーテルの閉塞や屈曲がない、すなわち流れを阻害するものがない場合でも尿が脇から漏れることがあります。
例えば、排便時に息んだときに少量漏れる、という患者さんの訴えを聞いたことはないでしょうか?
排便時に腹圧をかけると、実はカテーテルと尿道の隙間から尿が少量押し出されることがあります。
後述のカテーテルの構造に関係するのですが、膀胱内の尿を100%回収することはできないため、膀胱内に残っている尿を腹圧で押し出してしまうのです。
したがって、息んだ場合に脇から少量漏れるという現象は完全に回避できません。
あまり息まずに排便できるように排便をコントロールすることが有効だと思います。
カテーテルの閉塞や屈曲がない場合ー刺激
カテーテルの閉塞や屈曲がないにも関わらず、尿が脇から漏れ出るもう一つの理由は、膀胱が何らかの刺激により収縮する場合があります。
これを一般に「テネスムス」と言います。
特に男性で挿入時の刺激が持続してテネスムスが起こることがあります。痛がられない挿入をすることが予防の第一歩です。
痛がられず挿入するにはそれ相当のテクニックが必要ですが、別の機会にしたいと思います。
この「テネスムス」が起こった時に、尿が漏れるからといって固定水を増やすことは決してやってはいけません。
カテーテル先端にあるバルーンは膀胱出口付近にあり、膀胱の感覚に関する神経が集まった部分にも接しています。
固定水を追加する、すなわちバルーンを大きくすることで余計に刺激してしまいます。
カテーテルを少し細くするのも有効なことがありますが、個人的にはあまりそのような選択はしません。通常は16Frか18Frを使用しています。
14Frは細いので、挿入が少し難しくなること、閉塞や屈曲しやすいことなどから、16Frなどと比べるとトラブルが多い印象があります。
さて「テネスムス」の対処法ですが、鎮痛剤の座薬などが効果的です。一方、本当に留置が必要なのか再検討することも大切ですね。
他にも膀胱を刺激するような疾患、例えば膀胱炎、膀胱結石、下部尿管結石、膀胱がん、周囲臓器からの炎症の波及(大腸憩室炎の癒着・穿孔)やがん浸潤、放射線照射後などなどにも留意しましょう。
カテーテルの閉塞や屈曲がない場合ーカテーテルの構造に依存する問題
前述の息みのところで、100%尿を回収できないと説明しました。
カテーテルの先端は、バルーン部分の先に穴が2個程度空いている構造になっています。
バルーンの脇の部分の溜まった尿をこの穴で回収しにくかったり、コンプライアンスが保たれた膀胱(伸び縮みすることができる)の場合、カテーテルの穴の部分に膀胱の壁がくっついて穴を塞いでしまうことがあります。
膀胱洗浄の時に、注入した水を全量回収できないのはこのような理由なのです。
膀胱の壁が、カテーテル先端の穴を塞いでいる場合、カテーテル自体を90度程度回転させて、穴の向きを変えることで尿を回収できることがあります。
実際にこの方法で、尿もれが減った脊損の患者さんもいるので、ぜひ試してみてください。
尿道やカテーテル部分を痛がる
尿道や尿道口部分、会陰などカテーテルが挿入されている部分をいたがることがあります。
前述のテネスムスの表現として、会陰や尿道の痛みを訴えることがあります。
また、尿路に基本的に異物が入っているため刺激が起こりやすい状況ですし、異物には菌が付くのは避けられませんので、炎症を併発するなどして痛みを訴えることもありえます。
まずはカテーテルを留置して置かなければならないのか?と検討しましょう。
そして、感染による炎症悪化が原因と思われうようであれば、培養など確認をして抗生剤を投与することになるのですが、その場合もカテーテルが留置された状態か否かで投与期間や期待しうる効果にも差が出る可能性があります。
カテーテルが閉塞する
カテーテルが閉塞する場合の実際の対処法は限られます。
- カテーテルを交換する
- 洗浄を行う
- 水分摂取を励行する(尿量を増やす)
カテーテルが詰まってしまったら洗浄をするか交換をするしか方法はありません。
一旦は交換してもまた詰まったら困りますね。予防したいものです。
予防法には、カテーテルの交換頻度を上げる、水分摂取を励行して尿量を増やす、定期的に洗浄をする方法がとられるのが通常です。ぜひ次を参照してみてください。
血尿が出た
血尿が出た!というのもよくあると思います。
原因はさまざまですが、血尿を起こしやすい状態である場合(尿路に腫瘍がある、抗凝固剤を服用している)や出血性膀胱炎(感染性、放射線照射後)、カテーテルを引っ張ってしまった、などが代表的かと思います。
原因はともかく、緊急性があるかどうかの判断をまずすることが大切です。
緊急性があるのは、血塊が膀胱やカテーテル内で詰まってしまって閉塞している状態です。
この状態のときは、尿の流れの確保が必要となるため、カテーテルの交換や血塊除去のための洗浄、重症時には止血術などが行われます。ぜひ次を参考にしてみてください。
血塊でカテーテルが閉塞しないような状態であれば、水分をしっかりとって尿流を増やすことで経過をみて問題ありません。
翌日などに主治医に報告して指示を仰いでください。
カテーテルを引っ張って血尿になった場合、バルーン部分が前立腺や尿道を損傷している可能性があります。
このような場合は、バルーンの再挿入が必要となります。また急性前立腺炎などに併発に留意が必要となります。
抜けているのか確信が持てない場合は、固定水を抜いて再度挿入して固定し直すと間違いないでしょう。
日頃から尿道口から集尿バッグの接続部までの距離を知っておくのも良いでしょう。
すでに抜けて、出血がひどい場合は待たずに主治医に連絡し再挿入してもらいましょう。
さて、最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回は、内容が多いためざっとあげてみました。
もっと細かなこともありますが、ご要望があれば別の機会に書きたいと思いますので、コメントをいただければと思います。