処置・手技

膀胱洗浄は賛否両論ー必要に応じて行う(私見)

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こんにちは。 Dr. Noriです。

在宅医療の現場ではカテーテルが留置されている患者さんがいます。
中には膀胱洗浄を行っている人もいるかと思います。

実は膀胱洗浄には賛否両論あります。

今回は、その膀胱洗浄の賛否両論について紹介したいと思います。

膀胱洗浄は行うべきでない??

「膀胱洗浄は行うべきでない」と聞いたことはあるでしょうか?

感染予防マニュアルなどで「泌尿器科疾患などの出血による閉塞などが予想される場合を除き、日常的に膀胱洗浄は行わない」という趣旨の記載があるのを目にしたことがあるかもしれません。

「あれ?膀胱洗浄の指示が出ていて、定期的に洗浄しているけどいいの?」と思ったことはないでしょうか?

実は膀胱洗浄に関するエビデンスがあまりないのです。

膀胱洗浄は無効との意見

とても古いのですが、これに関する論文がよく引用されます。
Once-daily irrigation of long-term urethral catheters with normal saline. Lack of benefit. Arch Intern Med 149 (2): 441~443, 1989.

簡単に要旨をまとめると

(方法)32人の長期間カテーテルが留置された女性を対象に、毎日生食で潅流を10週間と潅流しない10週間をクロスオーバーして行っています。

(結果)カテーテルの閉塞、発熱、細菌尿の有病率がクロスオーバーを完遂した23例と部分完遂した9例で類似していました。

(結論)お金と手間をかけて毎日潅流してもカテーテル留置に関連した病気の予防には役立たなかった

というものです。

また、1981年に米疾病対策センター(CDC)のガイドラインに『膀胱洗浄をルーチンに行うことは感染や閉塞予防にはならないため推奨しない』と記載されています。

さらに、カテーテルとバッグの接続部を外して行う洗浄はかえって細菌感染を助長してしまう、閉鎖系を維持することが大切である、という見解があります。

そのため尿道留置カテーテルキットでは、カテーテル部分とバッグの接続部がカバーされ外れにくくしているものがあります。

 

こうなると「やっぱり膀胱洗浄はやめたほうがいいのかなあ?」と思ってしまいますが、

「日常的な膀胱洗浄はやはり必要」とうい意見も根強くあります。

膀胱洗浄はやっぱり必要?

ネット上の議論の場でも膀胱洗浄が有効の立場からは、「カテーテルの閉塞を防ぐためには必要」と見る意見が主流です。

膀胱洗浄をしないと膀胱内に沈殿物がたまりやすく、結石の原因となる、沈殿物を洗い流す目的で日常的な膀胱洗浄が有効というのが主な理由です。

臨床泌尿器(2017年)に勝岡洋治先生が次のような趣旨の投稿をされています。

・血液や浮遊物や沈殿物などがあれば閉塞予防で膀胱洗浄を行う。

・膀胱洗浄を清潔操作で行うように留意する。

・膀胱洗浄は無用と決めつけないで、効用にも注目する必要がある。

・目的に適合する場合は膀胱洗浄を行うべきである。

 

個人的には違和感なく感じます。泌尿器科医だからでしょうか?

私見:膀胱洗浄は必要に応じて行う

私個人の見解としては、勝岡先生の意見に賛成です。

カテーテルの閉塞により発熱するなど患者の状態に影響を及ぼす状態を回避したいですね。

発熱すると患者さんに体力的負担がかかります。特に在宅医療の現場では、通院が困難な状態の方が多いので、発熱などのイベントは身体的な負担となります。

患者さんが発熱すると介護する家族の負担も増します。

点滴治療が必要になると、医師や看護師の訪問が必要になるので経済的負担も増えます。

ですから熱がでないように尿路管理をすることが大切だと思います。

全例にルーティンに膀胱洗浄を行うべきではありません。
閉塞というイベントの頻度を考慮しながらカテーテルの交換の頻度や定期で膀胱洗浄を行うべきか判断するのが良いのではないでしょうか。

より説得力を持つために、医学的根拠と医療経済の視点、患者家族の負担といった視点でエビデンスが出ることが期待されます。

 

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