こんにちは。 Dr. Noriです。
今回は在宅医療の現場での膀胱洗浄のやり方を紹介します。
入院や外来でもやり方は同じなので参考になれば嬉しいです。
膀胱洗浄自体に賛否両論があります。しかし、在宅の現場では頻回にカテーテルを交換することが困難なことが少なくありません。
少しでもカテーテルの閉塞を減らせれば臨時で訪問して交換する回数を減らせるので、患者さんの医療費の負担が軽減され、往診医や訪問看護師の負担も減ります。すなわち社会全体の医療費削減にも繋がります。
また、経験上閉塞による尿路感染の発症のリスクも回避出来ることが少なくありません。発熱を回避できれば医療費だけでなく患者さんの身体的負担、家族の介護負担を軽減できることになります。
全例に無条件に膀胱洗浄を行う必要はありませんが(行うべきでない)、頻回に閉塞をするような場合には、洗浄を行うことでカテーテルの閉塞や尿路感染の発症を回避できるためその手技を紹介したいと思います。
ページの最後に動画もあるので見てみてください。
- 注入量は少なからず多からず
- 適度な力で注入する
- 適度な力でゆっくり吸引する
- 乱流をおこして浮遊物や沈殿物を回収する
適度な注入量が必要です
膀胱洗浄の時にどのくらいの生理食塩水を注入するのでしょうか?
洗浄に使用するカテーテルチップにいくつかの大きさがあります。通常は50mlのものを使用しますので、洗浄はおおよそ50mlの生食を注入して行います。
接続部を外しアルコール綿などで消毒後に、生理食塩水(生食)を吸ったカテーテルチップを接続して注入します。
私はこのときに全量を注入しないようにしています。
なぜでしょうか?
それは注入した生食が引けない理由を探るためです。
注入した生食が引けない理由
生食を注入した後で引けないという経験は誰でもあるのではないでしょうか。引けない理由は主に3つあります。
- カテーテルが閉塞している
カテーテルが閉塞している場合、生食を注入することが出来なければすぐに分かりますが、カテーテル先端の穴に組織や血塊がハマっている時に、注入はできるが引けないことがあります。
- カテーテルが抜けかかっている
カテーテルが抜けかかってる場合、生食を注入することが出来ても注入した生食を回収することが出来ません。注入した生食は流れてしまい、カテーテル先端の穴の部分に生食はなく尿道や前立腺などの壁があるため、吸引で陰圧をかけると簡単に穴が塞がれてしまいます。
- カテーテルの先端の穴が膀胱壁に接して塞がれている
カテーテル先端の穴が膀胱壁に当たる場合、吸引すると膀胱壁が穴を塞ぐため引けなくなります。この場合、再度注入することで穴に引き寄せられた膀胱壁が離れるので、再注入してゆっくり引くと中身が引けてくることがあります。
注入する量自体が少ないと引きにくいので、追加で50ml程度注入してみるとスムーズに引けるようになリます。
全量を注入しないのは、追加で注入して引けない理由を探るためでした。もちろん全量を注入して再度カテーテルチップに生食を吸ってから同じことをしてもOKです。
適度な力で注入する
生食を注入するときに強く押し込まないようにしましょう。
高圧で注入すると細菌を組織内に押し込むと考えられており、発熱などのリスクが生じます。
注入時は抵抗を指で感じながら押す力を調整します。
適度な力でゆっくり吸引する
注入した生食を引く時に強く引きすぎないように注意しましょう。
注入した生食が引けない理由を列挙しましたが、急に陰圧をかけると膀胱壁がカテーテル先端の穴に引き寄せられやすいので、力任せに吸引すると膀胱粘膜を損傷することがあります。
したがって適度な力でゆっくり引くほうが安全でしょう。
例外としてカテーテル内に血塊などが詰まっていると思われる場合で、強い陰圧をかけることで閉塞原因となったものを吸引できるできることがあります。
繊細な手の感覚で操作することとスムーズに引けない原因を推測する必要があるので、自己判断ではなく医師に相談すると良いと思います。
乱流をおこして浮遊物や沈殿物を回収する
膀胱内に細かな結晶やカスのようなものが沈殿していることがあります。
寝たきりの場合膀胱結石ができやすいのですが、これらがその原因になると考えられています。洗浄でこれらを取り除ければ、カテーテルの閉塞も予防できると思われます。
最近は行われることはありませんが、昔は3wayのカテーテルに生食を接続して潅流する洗浄を行っていたようです。
これは洗浄としての意義はなく、今では行われません。(肉眼的血尿があり、血液が凝固する前に流す目的でのみ行われます。)
手動の膀胱洗浄の場合も同様に、カテーテルに生食を注入してそのまま引くだけではこれらを除去することは困難です。
沈殿したものを巻き上げて、吸引する方法が有効です。
そのために軽くピストンするように動かすと効果的です。
この時も力加減が強くなりすぎないよう(圧を上げすぎないよう)注意が必要です。
いかがでしたでしょうか?
文字だけでイメージ出来た方も出来なかった方も動画を見ていただくとわかりやすいと思います。
動画は患者さんにご協力いただき、了解をいただいて掲載しています。
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