こんにちは。 Dr. Noriです。
今回は在宅医療には欠かせない癌の疼痛コントロールに使用する在宅用PCAポンプ CADD Legacyの設定項目について解説していきます。
CADD Legacyに不慣れな人が少なくありません
がんにより疼痛コントロールにCADD Legacyという在宅用PCAポンプを使用します。
このポンプに慣れていないため何かあったときにどうしたらよいのか不安を抱えている人が少なくありません。
でも安心してください。あなただけではないのです。
医師でも不慣れな人はたくさんいます。
正直に告白すると、私も使い始めは戸惑いながら少しずつ慣れていきました。
使い方を一通り教えてもらっても、すぐに覚えられませんよね。実際に現物に触れる機会がなければなおさら忘れてしまいます。
そこで設定に関する基本的事項を解説していきたいと思います。
なお実際の設定については別の記事で解説します。
- 流速(ml/hr)
- ドーズ量(ml)
- ロックアウトタイム(min)
- 時間有効回数
CADD Legacyはシリンジポンプと基本的に同じ
病棟勤務の経験がある看護師さんであれば、輸液ポンプやシリンジポンプの扱いには慣れているのではないでしょうか?
シリンジポンプはシリンジの充填された薬液を少しずつ持続的に投与する機械です。
CADD Legacyは専用のカセット容器に充填された薬液を少しずつ持続的に投与するための機械です。
つまりリンジポンプとCADD Legacyは基本的には同じなのです。
シリンジポンプについて復習してみましょう
シリンジポンプではシリンジの大きさと1時間あたりの投与量を設定します。この1時間あたりの投与量(ml)を流速(ml/hr)と言います。
あとはシリンジに詰める薬液の濃度によって、1時間あたりに投与できる薬液の量(mg)を調節します。
すなわち
濃度(mg/ml)x流速(ml/hr)=1時間あたりの投与される薬剤量(mg/hr)となります。
一日の投与量を知りたければ、上の式を24倍(24時間)すればよいわけです。
ちょっと面倒な話になったように思うかもしれませんが、、、少しだけ我慢してください。
大切なのは、
薬が濃いのか薄いのか(濃度:mg/ml)、どのくらいの速度で投与されるのか(流速:ml/hr)で得られる効果が変わるということです。
ちなみに
このときポンプにセットするシリンジの中身の量を24の倍数、すなわち24mlや48mlにすると計算しやすくなります。
なぜなら流速が1ml/hrであれば一日に24ml投与され、2ml/hrなら一日に48ml投与されるからです。
機械の流速(ml/hr)を設定する
ここまでで薬液の濃度(mg/ml)と流速(ml/hr)で投与量が決まることは理解できたでしょうか?
薬液の濃度は医師の指示(処方)により決定されるので、機械では流速を設定することになります。流速の設定だけであれば簡単ですね。シリンジポンプはこれで設定が終わりです。(シリンジの大きさの設定もありましたね。。。)
ところがPCAポンプにはもうちょっと設定があります。
疼痛時にドーズボタンを押すことでレスキューとして薬液を追加して投与することが出来ます。このレスキュー機能のための設定が加わります。
レスキュードーズに関する設定
レスキューとは痛みや苦痛が出た時に追加で薬液を投与することです。
CADD Legacyではボタンを押すことで簡単にレスキューを行うことができます。CADD Legacyではレスキューのことをドーズと表現されます。
ボタンを押した時にどれだけ薬液を追加するか(ドーズ量:ml)設定する必要があります。通常、1時間あたりの投与量すなわち流速(ml/hr)と同量に設定します。
例えば流速が0.2ml/hrの場合、ドーズ量を0.2mlとします。
もう一つ大切な設定をしなければなりません。
もし立て続けににボタンを押してしまった場合に、ボタンを押すたびに薬液が投与されれば過量となる心配があります。
そこで一定時間が経過するまで薬液が投与されないよう制限し、過量投与とならないようにする安全機能があります。
この与薬制限する時間をロックアウトタイムと言い、1時間あたり投与される回数を時間有効回数と言います。
例えば、ロックアウトタイムを30分としたら時間有効回数は最大60分/30分=2回、ロックアウトタイム15分としたら時間有効回数は最大60分/15分=4回となります。(変則的ですが、時間有効回数を少なく設定することも可能です。)
その他、閉塞感度や気泡検知などセンサーに関する設定がありますが、これらは初期設定のままで良いのであまり気にしなくても良いかと思います。
[…] CADD Legacy(在宅用PCAポンプ)の設定方法ー設定項目を理解する […]